鼻づまり(鼻閉)はよくある症状です。風邪をひけば、鼻閉はよく出る症状ですし、いろいろなお鼻の病気でも起こります。
両方同時につまったり、右と左が交互につまる場合は、風邪などによる急性鼻炎や、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎を始めとした、炎症性の疾患が考えられます。
一方で同じ側がいつも詰まっている場合は、鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎をまず考えますが、何か鼻内にできていることも疑う必要があります。
炎症や鼻中隔弯曲症など以外の鼻閉の原因で多いものに、鼻茸(ポリープ)がまず挙げられます。ポリープは通常、両側にでき、両側性の鼻閉を起こしますが、時に片方にだけ、大きなポリープを作ることもあります。
鼻茸は喘息や副鼻腔炎を合併している方が多いので、治療としてはアレルギーや副鼻腔炎の治療と似たものになります。大きいものの場合は手術で摘出します。
特に喘息持ちの方は、ポリープが重症化しやすく、また手術でとっても再発しやすいことがあります。(好酸球性副鼻腔炎)
鼻茸は悪性の病気ではありませんし、それ自体が悪性化することもありません。しかし鼻茸の奥に別の病変が隠れていることもありますので、注意が必要です。
鼻中隔弯曲症が原因で起こる片方の鼻づまりは、通常、若い頃から長いこと感じていることが多いものです。
アレルギーや肥厚性鼻炎といった、交代性(交互におこる)鼻づまりも心配いりません。
ただ今まで感じたことがなかったのに、最近、片方の鼻閉が気になるという場合は注意が必要です。ここでのお話は、こうした場合に、時に見られる腫瘍のお話です。
乳頭腫は代表的な良性の腫瘍です。パピローマウィルスの感染によって起こるとされています。基本的に良性ですが、組織によって内方発育型と、外方発育型に分けられます。内方発育型は、将来がん化する可能性があります。
組織確認もかねて、乳頭腫は基本的には手術による全摘出が必要になります。お鼻の中だけでなく、殆どは上顎洞や篩骨洞という副鼻腔の中まで充満していることが多いのです。
見た目が通常のポリープ(鼻茸)と似ていますので、ポリープ切除を受けても、すぐ再発する場合は可能性として考えるべき病気です。
乳頭腫の他にも、血管腫、線維腫などの良性腫瘍があります。
お鼻の中にもがんができることがあります。上顎洞や篩骨洞といった副鼻腔にがんができ、その一部がお鼻の中に広がっていることが多いのですが、お鼻の中の粘膜から発生したがんもあります。
鼻閉だけでなく、鼻出血で気づく方もおられます。あるいは痛みを感じられる場合もあります。また、お鼻の奥にできる上咽頭がんの場合、耳が詰まった感じがするなどの中耳炎症状を起こします。
がんとは違いますが、同様の悪性の腫瘍として、悪性黒色腫がお鼻にできることがあります。この病気は皮膚にできることが一般的ですが、耳鼻咽喉科領域でも口の中や、鼻の中の粘膜にできることがあります。
その他、鼻内の上方にある、匂いを感じる嗅神経が腫瘍化した、神経芽細胞腫(下写真)などもあります。
また血液の病気の悪性リンパ腫(下写真)が鼻内に起こることがあります。
悪性腫瘍の場合、時には大きくなって頬が腫れたり、鼻の外まで広がってくると眼が押されて、ものが二重に見えたりすることもあります。痛みや鼻出血を伴うこともよくあります。
急速に進む場合もありますので、症状があれば早めの受信が必要です。
身体に侵襲が少ない検査から言えば、CTやMRIがまず挙げられます。造影剤を使わない単純CTでも、周囲の骨の破壊など悪性の所見がみられることもあります。鼻茸などの副鼻腔炎を疑う症状でも、一側性の場合はこうした画像の検査は行ったほうが望ましいと言えます。
造影剤は、アレルギーなどの副作用や腎機能によって使えないこともありますが、悪性を疑うのであれば、必要な検査です。
腫瘍が疑われるばあいは、組織をとって調べる生検が必要です。局所麻酔薬を注射してし、わずかの組織をとって診断をつけます。ただし、血管腫や黒色腫を疑う場合は、出血や転移のリスクの問題もあり、注意が必要です。
良性、悪性にかかわらず手術が主体となります。
悪性腫瘍、特にがんの場合は手術の他に、化学療法、放射線治療と組み合わせて治療を行います。化学療法では、とくに上顎洞がんでは、腫瘍に栄養を送っている血管にカテーテルを用い、直接抗がん剤をいれる選択的動注療法を行うこともあります。
リンパ腫の場合は化学療法や、リンパ腫の種類によっては放射線治療を行うこともあります。場合によっては手術を行うこともあります。
いずれにせよ、悪性腫瘍の診断を早期に行い、治療へ移ることが大切です。お鼻の症状は一般的な病気のことがほとんどですが、まれに悪性の病気が隠れていることもあります。特に今回のような、最近感じるようになった、片方だけの鼻閉は、念のために診察を受けられることをお勧めします。