先天性耳瘻孔(せんてんせいじろうこう)

耳の周囲が感染を繰り返す

 耳の入り口の前や耳たぶの上のほうが時々腫れて痛みが出たり、膿が出てきたりする方がおられます。これは先天性耳瘻孔もしくは耳瘻管の感染によるものです。多くは普段良く見ると耳の前の方に小さい穴が見つかるはずです。


 決して珍しい病気ではありません。多くは抗生剤で炎症を抑えることでしのぐことができますが、場合によっては手術が必要になることがあります。


 この様に耳の前や時にに袋状の主張を認めます。

 よく見ると(拡大してみてください)小さい穴(瘻孔)を中心に真っ赤に腫れ上がっています。

先天性耳瘻孔、耳瘻管とは

 赤ちゃんはお母さんの身体の中で、妊娠週数が進むと共にヒトとしての形を作っていきます。耳介(耳の外側の部分)は小さい盛り上がりがくっつくようにしてその原型を作っていきます。その中央部分は内側に凹んでいき奥の方へ続く外耳道(耳の穴)を作ります。


 この盛り上がりがくっつくときに小さな袋のもととなる隙間と、外へ続く小さい管状の隙間が残ってしまうことがあります。これが耳の前に見える小さな穴(瘻孔)とその奥へ続く管になるのです。外からこの穴から皮膚の汚れや細菌が管の中に侵入して、奥の袋の中で感染を起こした結果、耳の一部が腫れ上がり痛みが出るということです。

 穴(瘻孔)の位置も様々です。耳介の前の方の付け根の近くが多いようですが、後ろの方にある方もいます。

 

 中にはこの小さい穴がない方もおられます。こういう方でも奥の方の袋だけは残っていて、血液に乗って細菌が入ってきて感染を起こします。また穴も両側のお耳にある方もおられれば、片方にしかない方もおられます。


  難しいのはこの管の部分が深く続いていると、耳の軟骨を抜けている場合があるということです。時には袋本体が耳の後ろ側にある場合もあります。あとでお話 しますが、手術をする場合、軟骨の一部を繰り抜いたり、切除して管と袋を取り除く必要があり、手術の難易度が上がります。

治療法

 治療としては、炎症が強い時は抗生剤の内服をまず行います。ただ効果が上がらず、痛みが強い場合は腫れているところを少し切開して内部の膿を外へ出すこともあります。ただ何回もこれを繰り返していると、耳の傷が瘢痕化し、袋自体も周りと癒着するようになり、袋の周りの皮膚が汚くなります。

先天性耳瘻孔

 この方も、感染を繰り返していた方です。右耳の瘻孔から少し距離をおいた前下方に袋本体があります。何度も感染を繰り返していたため、皮膚が固くなってしまっています。

 こうなると袋と皮膚が癒着しており、皮膚の合併切除が必要となることもあります。

 何回も繰り返す場合は手術を行うことになります。


 手術は耳の皮膚の穴からその奥の管、そして袋本体を残さず取る必要があります。また時には軟骨の一部を一緒に切除することもあります。ただしこれによって耳の形が変形することはそうありません。


 すべてを全部摘出するのを目標に手術をしますが、中には小さい袋の部分や管が耳の奥のほうに進んでいることもあり、途中で追跡が困難になるケースもあります。このような場合、小さい断片的がのこり、しばらくしてまた腫れてくることがあります。その場合は申し訳ないのですが、再手術ということもあります。

 また何度も感染を繰り返している場合、皮膚と袋が癒着していて、袋の全体を確認するのが困難というケースもあります。その場合も取り残しが出る危険性が高くなります。そのため皮膚を一部合併切除することもあります。

 皮膚をそのまま寄せて縫合できればいいのですが突っ張ってしまい縫合ができない場合、周囲の皮膚に切開をいれ、皮膚を移動させて緊張をとって縫合することもあります。

 

手術の時期

 腫れるのはやはり子供さんが多いため手術の時期について考えなくてはなりませんが、年齢というよりどれくらい繰り返して腫れるかということで決めます。耳瘻孔があっても全く腫れない方もおられます。こういう方の手術は必要ありません。


 何度も繰り返し、皮膚が汚く固くなってきそうであればやはり手術が必要です。中学生くらいからは局所麻酔の日帰り手術で十分できます。小さい子供さんはやはり全身麻酔で行う必要があります。


 いずれにせよ、腫れてきた時はあまりいじらず(潰すとかしないで)、早めに受診をされることをおすすめします。