ご年配の方で入れ歯(義歯)を使う方は多いと思います。時に、義歯を間違って飲み込んでしまう方がおられます。特に寝たきりの方で、筋力が弱っている方や、認知症の方によく見られます。
誤って飲み込んでしまった際に、吐き出す力がないことによります。
歯肉のついた、大きな義歯(上顎を覆う口蓋床があるものや、広い範囲の歯茎のついたもの)であれば、そう奥に入り込むことがないので、口の中から丁寧に取ればその場で取り出すことは可能です。
一方で、ブリッジタイプなどの、部分入れ歯は摘出が難しいことがあります。
こういう義歯には、残った歯を固定に使うクリスプという、ツメ型の金具がついています。時に、これが喉の奥の粘膜に刺さり、摘出が難しい事態に陥ります。
この方は、アルツハイマー病を患っておられました。下あごを広く覆うタイプの入れ歯を、誤って飲み込んでしまいました。
クリスプ部分がないのと、義歯が大きいため、喉の奥の方まで落ちていません。こういうタイプは、比較的簡単に、口内から取り出すことができます
義歯ではなく、さし歯が外れて飲み込んでしまった91歳の方です。
食道の入り口の左側にひっかかっていました。クリスプがなかったことと、歯ぐきにねじ込む部分が、上を向いて落ち込んでいました。ファイバースコープで見ながら、ワイヤー鉗子で取り出すことができました。
3-4個の歯が連なったブリッジや、下顎用の細長い入れ歯の場合、喉の奥、食道の入り口付近まで落ち込んでしまうことがあります。この場合、前述のクリスプが、喉の周囲の粘膜に刺さってしまい、摘出困難となります。
この方は、肺炎で入院されていた方です。
ツメ(フック)状のクリスプで固定するタイプのブリッジのある義歯でした。
レントゲンで見ると、尖ったクリスプでしたが、ファイバースコープで見ると、幸い粘膜には刺さっていませんでした。
臥位にて、喉頭鏡と鉗子を使い、丁寧に摘出しました。