扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍

 通常の扁桃炎がひどくなり扁桃の周りまで炎症が広がったものを扁桃周囲炎、さらにそこに膿が溜まったものを扁桃周囲膿瘍と呼びます。

 

 扁桃は被膜と呼ばれる膜で覆われており、通常は、これを超えた炎症を起こすことはありません。しかし、タバコの本数が多い方や、糖尿病、免疫抑制剤の服用など、口の中の免疫力が落ちやすい原因をもつ方は、扁桃炎が悪化しやすくなります。

 


 右の扁桃周囲炎です。扁桃の周りが赤くなっていますが、それほど腫れていません。40代の男の方ですが、たばこも吸われず、糖尿病その他もありませんでした。こうした軽症の方は数日の点滴だけで改善します。


 35才の男性。 3日前がら喉が痛かったそうです。今日になって水ものめないほどひどくな ったため受診されました。口も開けにくい状態です。 右側の扁桃の周りが著明に腫れており、元々の扁桃腺や口蓋垂(のどちんこ)の形がわからないほどになっていました。
 この症例は右の扁桃周囲膿瘍です。
  
 
   治療は抗生剤、時にステロイドなどのお薬を点滴します。
 腫脹がはげしい場合は、膿が溜まっているところを切開し、排膿します。
 食事ができず入院が必要なこともあります。
 
   この方は、4日間の点滴でほとんど消失し食事もできるようになりました。タバコ1日30本とのことで、禁煙をお願いしました。
 扁桃周囲膿瘍は、糖尿病の方や、喫煙家の方など、口のなかの免疫力が低下している方によく起こります。

扁桃周囲膿瘍

 左側の扁桃周囲膿瘍のCT画像です。左側の扁桃が大きく腫れ、その外側に膿がたまっているのがわかります。

 

 炎症が広がると、周囲の筋肉まで侵され、口が開けにくくなったりすることもあります。 

 

 稀に菌が頸や胸の方まで広がり、頚部膿瘍縦隔洞炎など重症化することもあります。呼吸困難や敗血症など命に関わる状態まで悪化することもありますので注意が必要です。緊急手術で頚の外側から切開し,膿を出す手術をすることもあります。

 


膿瘍切開

 上で述べたように、状態が悪く点滴での回復が難しそうな方は、腫れているところを切開し、膿を出します。あまり写りがよくありませんが、左側の扁桃周囲膿瘍の切開後の様子です。白い膿が大量に出てきました。最初はかなり腫れていたのですが、膿が一気に出たあとはこのように縮みます。