「中耳炎が治りにくい」という子供さんがおられます。一昔前は充分な効果を持つお薬が少なかったので治りにくかったのですが、現在は複雑な事情で治りにくい例が生じています。
治りにくいといっても、実際は実は2種類にわけられます。一つは治療をやっててもいつまでも治らないタイプ、そしてもう一つは治ったと言われても、短期間で何回も繰り返すタイプです。
「難治性中耳炎」と「遷延性(せんえんせい)中耳炎」
簡単にいうと1回かかった中耳炎がいつまでも治らない状態です。耳の痛みや発熱などの自覚含め、鼓膜の赤みがいつまでも取れないのを「難治性」、痛みなどの自覚症状は伴わないものの3週間以上鼓膜の状態が変わらないものを「遷延性」と定義されています。
右の遷延性中耳炎ですが、症状が収まってもまだ鼓膜の赤みと腫れが続いています
反復性中耳炎
急性中耳炎が繰り返して起こるのを反復性中耳炎と呼びます。
「繰り返すと言っても曖昧ですが、実際その基準はきちんとしたものはありません。今でも国によってその基準に差があります。日本では学会による治療ガイドラインで「6ヶ月に3回以上、もしくは12ヶ月に4回以上の急性中耳炎を起こす状態」を反復性中耳炎としています。
ただし、その間何も起こっていないわけではなく、鼓膜の内側に液がたまったりしていることがあります。
例えば下のお子さんの場合、中耳炎の赤みが収まったあとも浸出液が溜まってきて、時に鼓膜が膨隆しています。さらに感染をおこし、痛がったり熱が出ることを繰り返します。内服薬のみでコントロールが効かない場合、鼓膜切開を行いますが、何回も鼓膜切開を繰り返さなくてはならないため、鼓膜チューブ留置術を最終的には行います。
基本的には急性中耳炎から難治化し反復化するのですが、その背景にはいろいろな要因があります。大きく分けると患者さん個人のが持っている感染に対するリスクと、外部の問題に分けることができます。