味がわからなくなることが稀にあります。食べ物がおいしく感じられないのは、人生の楽しみが一つ奪われるようなものです。
味覚の障害と言っても2つにわけられます。一つは味そのものを感じなくなる場合(味覚低下)と本来の味が感じられなくなる場合(異味症)です。今回は味覚低下についてまとめてみます。
大きく分けると
1. 味に関係する神経に障害がある場合
2. 舌やお口に原因がある場合
にわけられます
舌の味覚をつかさどっている神経は顔面神経の枝(鼓索(こさく)神経や、大錐体神経)、舌咽(ぜついん)神経です。これらの神経が障害を受けると、味覚障害が出ます。
代表的な病気としては顔面神経麻痺が挙げられます。この病気は多くはウィルスで起こります。顔の麻痺以外に、舌の前の方を中心に、味覚障害が出ることがあります。
もう一つは真珠腫性中耳炎という慢性中耳炎が挙げられます。この中耳炎は周囲の骨を溶かし、中耳の傍を通っている顔面神経にダメージを与えます。
上記の神経が原因の場合、舌の片側だけが感覚が鈍って感じます。
脳梗塞や脳出血等の後遺症として、味覚障害が出ることもあります。
舌に白い苔のような白苔(はくたい)がつくことがあります。舌表面を覆ってしまうため、味がわかりにくくなります。
白苔は疲れが溜まったり、栄養障害、あるいは胃腸に病気があったりすると現れます。
また抵抗力が落ちていると、細菌やかび(真菌)が口の中に繁殖し、白苔が現れることもあります。
口や喉のがんで放射線治療を受けると、味覚を感じる細胞がダメージを受けたり、唾液の分泌が低下し、味覚が低下します。
貧血の中には、鉄分の不足でおこるものがあります。鉄欠乏症は、舌の表面に変化を起こし、味覚が低下することがあります。
また亜鉛という微量金属は、味覚の細胞が味を感じるために必要と言われています。栄養の偏りはもちろんですが、細菌の食生活の変化で、気づかないうちに、亜鉛が不足している場合があります。
腎臓や肝臓の病気がある方、慢性的なビタミンAやB12の欠乏症(悪性貧血症など)でも味覚障害が起こります。甲状腺機能低下症など、ホルモンの異常が味覚と関係することもあります。
血圧や鎮痛剤を始め、抗生剤やホルモン剤、また抗がん剤など、幅広いお薬の副作用で味覚障害が出ることもあります。
年齢を重ねられたり、シェーグレン症候群など、唾液の分泌量が少なくなる病気で、味覚が低下することがあります。
風邪やアレルギーでお鼻が詰まっていると、味を感じにくくなります。風味と味覚は一体となって感じるものだからです。
特発性味覚障害ともいわれる、原因不明な味覚障害もあります。実は原因不明なものの割合は比較的多いのです。ただし血液検査で正常範囲であっても、亜鉛を補充することで改善する例もよく見られます。