扁桃が赤くなって痛みがでることはよくあります。ただし片方のみ痛みや、赤く大きく腫れていることが続く場合は注意が必要です。
たばこを飲まれる方の場合や、慢性扁桃炎で痛みが片方だけあることもよくあります。ただ1ヶ月も同じ側の痛みが続くというのは、やはりおかしいと考えるべきです。痛みがなくとも違和感だけのこともあります。
扁桃にもがんや、悪性リンパ腫という血液の悪性の病気が起こることがあります。
扁桃のがんは、タバコや強いアルコールを飲む方に多く見られますが、そうでない方にも見られます。
扁桃がんに限らず、咽頭のがんの発症に、パピローマウィルスというウィルスの関与が疑われています。これは女性の子宮頚がんの原因として有名です。
口の中を触る
指で触ってみて、片方の扁桃が他方に比べ硬い感じがする場合は、腫瘍の可能性があります。病院で診てもらうことをおすすめします。
柔らかく感じても、他方に比べ、片方が明らかに大きい場合、悪性リンパ腫などの可能性があります。ただし、健康な人でも、炎症を繰り返した結果、片方が大きくなる方もおられますので、過剰な心配はしないでください。
鏡で見る
扁桃にはよく膿(膿栓)がつきますが、片方だけに白い膿が付いている場合、そして痛みが続く場合も注意が必要です。通常、炎症の場合、両方に同じように膿がつくことが多いのです。
片方だけに膿栓が付いている場合、その奥に何か病変が隠れていることがあります。腫瘍があると、局所の免疫力が低下することが考えられ、その結果、膿がつきやすくなるのではないかと思います。
右側の扁桃がんの患者さんです。喉がいたいとのことで扁桃炎として治療を受けて来られましたが、治りにくいとのことで受診されました。
右側の扁桃が片方だけ腫れています。更に白い膿(膿栓)が右側だけに多くついています。
こうした扁桃は要注意です。
首を触る
扁桃の腫瘍の場合、頚部のリンパ節が腫れることがあります。首を触ってみて、しこりがある場合は、気をつける必要があります。
もっとも、通常の扁桃炎でも、炎症が強い場合は、リンパ節の腫れはよく見られます。過度に心配されず、耳鼻咽喉科を受診されてください。
両側のくびのしこりで紹介されました。写真は右側のくびのリンパ節の腫れですが、左側の扁桃が大きくなっています。扁桃からの組織検査で、悪性リンパ腫と診断されました。
扁桃の腫瘍が疑われた場合は、少し組織をとって調べる生検を行います。CTやMRIなどの画像検査で扁桃の奥の部分への広がりがないかを確認します。超音波検査で頚部のリンパ節の腫れがないかを調べます。
組織検査
扁桃がんは、放射線や化学療法が効果があるため、多くはこの2つを中心に、手術を必要に応じて組み合わせる治療がされています。
手術は扁桃とその周囲の切除や、くびのリンパ節の郭清が中心です。周囲に広がった扁桃がんの場合、その切除範囲が大きくなり、とった場所を縫い合わせることができないこともあります。胸や腕の筋肉や皮膚を使った、皮弁による再建手術が必要になることもあります。
悪性リンパ腫の場合、リンパ腫のタイプや進行度により治療法が異なりますが、血液の病気の一種で、全身の治療が必要であることから、薬(抗がん剤や分子標的薬)での治療になります。
全身の病変がなく、扁桃だけに限局している場合で、悪性度の低いリンパ腫の場合、扁桃をとる手術を行うこともあります。
扁桃がんは(特にパピローマウィスルが関与するタイプでは)、放射線や化学療法が非常によく効くがんです。早めの診断がのぞましいがんです。