くびのしこり-「柔らかいしこり」編-1

あくまで一般的な病気のご紹介です。この内容を読んで自己判断されず、専門医にもご相談されることをおすすめします(袋状の悪性の腫瘍もあります)

くびの柔らかいしこり

 くびの前の方あるいは横の方に柔らかいしこりがあり、時に大きくなって周りの皮膚が赤くなったりする患者さんがおられます。

 小中高校生くらいの方に多く見られますが、時には大人の方まで年齢層はいろいろあります。こういうものはいわゆる嚢胞(のうほう)とよばれる袋状の構造物です。

 一部を除き、先天性(うまれつきもっている)のものがほとんどです。袋は通常は触ると柔らかいかゴムボールのような弾力があり、いわゆる硬いしこりとは違います。


 こういう症状の代表的なものについてまとめてみます。


1.正中頸嚢胞(せいちゅうけいのうほう)

 くびの真ん中ににできる嚢腫です。

 大人の、のど仏の位置より上の部分(性格には舌骨という骨のそばにできます)に見られます。

 次に述べる側頸嚢胞と同様に、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で成長(分化)していくときに原型ができます。簡単に言うといろいろな筋肉や気管を作っていく過程で起こった、神様のイタズラのようなことでできた袋が大きくなったものです。

 専門的に言うと鰓溝、鰓裂の異常と言われます。

5歳の子供さんの正中頸嚢胞です。炎症を起こすと赤くなります

 子供さんの場合、周囲の方がくびの真ん中のしこりに気づきます。小さいものではビー玉太から大きい物になると数センチになるものもあります。

 中は液体ですが、多くは感染をくりかえし、膿がたまっていることがほとんどです。しこりがあるだけで何もおこらないないこともあるのですが、時には赤く腫れているときは痛みを感じます。

 中に膿がたまっているので触るとぷよぷよしたり、ゴムボールのような弾力を感じることがあります。

大人の方に出来た正中頸嚢胞です。かなり大きくやや右側によって出来ています。

 気管を押しているため、飲み込んだ時や、普段から違和感がつよいとのことでした。袋が舌骨の下に付着しています。後ほどお話するように、手術で取る場合はこの舌骨を一緒に取る必要があります。


2.側頸嚢胞(そくけいのうほう)

 正中頸嚢胞と同じ理屈でできる嚢胞です。多くはくびの横に触れる筋肉(胸鎖乳突筋)の内側とその奥の動脈の間にできます。

 

 この方も大人の方ですが、くびの右側に袋状の膨らみに気づかれました。MRIを撮ってみるとくびの筋肉の内側に袋状の腫瘤ができていました。
 超音波検査でも写真のように袋状になっています。


治療について

 これらの2つはどちらも皮下のしこりとしてのみ触る場合もあれば、まれに皮膚に小さい穴ができており、そこから膿が出てくることがあります。
   感染を起こして痛みが出る時は抗生剤の投与で炎症を抑えます。
   また針で刺して中の膿を抜くことで小さくすることもできます。ただし嚢胞がなくなるわけではないので、場合によってはまた大きくなったり腫れることがあります。

 

 最終的な治療は皮膚を切開し摘出する手術が中心となります。袋は管状となり喉の奥の方まで続いていることがあります。袋を完全にとってしまわないと、また腫れてくることがあるので、可能な限り追跡して取り除きます。

 正中頚嚢胞の場合、喉ぼとけののうえにある舌骨の中を通っていることもあるので、一緒に舌骨を取り除きます。特にこれによって問題が起こることはありません。

 

 手術のタイミングは決まっていません。2回以上腫れて痛みが出たり、美容的に目立つ場合が手術の適応になるかと思います。全身麻酔の手術になりますし、術後の傷がどうしても多少残りますので、美容的な点や年齢なども考えて総合的に手術の適応を決めて行くことになります。


 正中頸嚢胞を摘出した(画像はぼかしてあります)あと、注射針で刺してみる中から液が引けてきました。感染があまりないので比較的きれいな色ですが、濃い黄色い膿がたまっていることもあります。