頸部膿瘍(首の炎症)

虫歯や扁桃炎が原因の頚部膿瘍

 首の内側には脂肪に囲まれた、筋肉や血管があります。それらの隙間に細菌が感染すると、膿瘍(袋のように膿がたまった状態)になることがあります。

 

 細菌の感染は歯の炎症からが多いのですが、扁桃炎や、耳下腺(耳の下にある唾液腺)の炎症が周囲に広がることでも起こります。

 

 重症の膿瘍では、気管が圧迫されたり、気管の入り口ののどの粘膜が腫れることで呼吸困難になることもあります。その場合、緊急気管切開(気管に直接穴を開けること)が必要になることもあります。


 この方は、齲歯の放置が原因で起こった右頸部膿瘍です。

 右側の下顎の腫れと口が開かない、痛みが強いとのことで来院されました。

 

 右下の親知らずに深い齲歯(うし 虫歯)が見られます。

 CTでみると、下顎の奥の骨の周りに炎症と膿が広がっています。これが首の方にまで広がり、膿瘍を形成していました。

 

 すぐに頸部の皮膚を切開し、中にたまった膿を外へ出し、生理食塩水で洗いました。小さい管を数日間入れておき、膿が出るのを促しました。

 

 1週間弱の入院加療となり、退院後、歯科で抜歯をしていただきました。


 この方も、左下の齲歯がありながら、放置されていた方です。頚が腫れ、息が苦しくなり、声がかすれてきたとのことで来院されました

 

 ファイバーで喉を見ると、両側からの粘膜の腫れが、声帯とその上の喉頭蓋という蓋を圧迫しています。

 声帯の腫れは軽度ですが、その周囲は水っぽく腫れ上がっています。そのままだと呼吸困難の可能性もありました。

 

 CTでは、喉頭の周りに膿が溜まり、膿瘍を形成していました。入院の上、抗生剤の投与を開始しましたが、幸い大事に至ることはありませんでした。


 頚部膿瘍は深い齲歯(虫歯)などが原因ですが、糖尿病の方、免疫抑制剤を使われている方等は、重症化しやすい傾向があります。

 重症化すると、心臓や肺と接した縦隔に炎症が広がり、縦隔膿瘍を起こします。命の危険にさらされることもあるため、適切な早期の治療が必要です。