扁桃が大きいだけで手術を進めることはありません。
扁桃は小さい子供さんのうちは、外部からの細菌やウィルスが身体の中に入るのを防ぐ働きをしています。ですから小さい頃は必要な組織です。
炎症が起こると免疫反応をおこし、扁桃は大きくなりがちです。子供さんが扁桃が大人に比べて大きいのはこういう理由です。4歳から6歳くらいまでは、扁桃やアデノイド(鼻の奥の扁桃)のサイズは増大傾向にあります。
全身の抵抗力がついてくると、扁桃はその働きがなくなり次第に小さくなってきます。12歳位になると、大体小さくなってくるといわれています。
しかし、強い炎症を繰り返していると、扁桃の組織が固くなってあまり小さくならない場合もあります。いわゆる扁桃肥大の状態です。
また、最近の論文では、6歳以降も、扁桃やアデノイドのサイズは変化しない(縮小しない)という説も出ています。(Patterns of adenoid and tonsil growth in Japanese children and adolescents: A longitudinal study: Takayoshi Ishida 他 Sci Rep. 2018)
小児でも大人でも扁桃の大きい、いわゆる扁桃肥大の方がおられますが、全てが手術適応になることはありません。
実際の扁桃手術の適応は、簡単に言うと、次の4点です。
1.慢性扁桃炎で発熱や咽頭痛をくりかえす場合
大人の方は、やはり繰り返して扁桃炎をおこすと学業やお仕事に差し障りがでます。またときには扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍など重症の扁桃炎になることもあります。
子供さんの場合、熱性痙攣の原因になります。扁桃炎やアデノイドの炎症が、反復性中耳炎の原因になる場合もあります。
2.夜間、息が止まったり、いびきがひどい場合
夜中、何度も息が止まりそうになる睡眠時無呼吸症候群や、強いいびきがある場合で、扁桃肥大に問題があると思われる場合は手術の対象になります。
とくに子供さんの睡眠時無呼吸症候群は、心臓への負担が強くなり、心臓の肥大や、発達の遅れ、漏斗胸(息をするとき胸がへこむ)などの原因にもなります。
大人の方も含め高血圧や、睡眠不足からくる集中力の低下、イライラ感なども起こすことがあります。
3.食事が遅い、身体が小さいなど
扁桃が大きいと、喉が狭いため、食事が早く食べられない場合があります。食事時間が長いと満腹感が早く感じ、食事の量が少量になることがあります。年齢と標準体重との比較で、扁桃肥大による食事の量の問題がある場合は、扁桃を取ることをお勧めすることもあります。
4,扁桃病巣感染症の場合
扁桃炎との関係が考えられている、慢性腎炎(糸球体腎炎やIgA腎炎等)や掌蹠膿疱症と行った皮膚病の治療は難しいことがあり、原因器官と考えている扁桃を摘出することがあります。