カビ(真菌)による副鼻腔炎があります。
重度の糖尿病、長期のステロイドや免疫抑制剤を服用している方にも見られますが、特に持病がない方がほとんどです。
カビによる真菌性副鼻腔炎では
1.片方の目の周りや頬の痛みがある
2.臭い匂いをいつも感じる
という訴えが多いようです。まれに血性の鼻水を訴えられることもあります。
ほとんどの真菌性副鼻腔炎は片一方に起こります。副鼻腔炎を起こすカビとしてはアスペルギルス、カンジダ、ムコールといった種類のカビが挙げられます。アスペルギルスの一部やムコールは周りの骨を溶かしたり破壊していくものがあります。
鼻腔のそばには眼球、上には脳があります。時にそこへ進展すると視力が障害されたり、脳炎や髄膜炎を起こすことがあります。カビに効く抗真菌剤も効果が不十分なことがあり、稀ではありますが、こうした脳合併症や、菌血症は非常に危険です。
病院での検査ではまずレントゲン写真で片方の影を認めたあと、CTで確認します。
カビによる副鼻腔炎は、炎症が強くある程度の時間が経っていることもあり、副鼻腔の周りの骨が厚くなっている所見がみとめられます。またカビ自体が塊(菌塊)を作っており、内部が石灰化といって、石のようにうつる部分もあります。
MRIという検査も真菌の診断には有効です。
同じように片方だけの副鼻腔の影があっても、歯が原因で起こる歯性上顎洞炎や、単純な片方だけの慢性副鼻腔炎も中にはあります。また良性悪性をとわず腫瘍ができている場合もあります。
治療については、抗真菌剤の内服や点滴では残念ながら完治することは難しいため、多くは手術をおすすめすることになります。手術は現在はほとんど内視鏡手術で行います。菌の塊と、炎症の強い粘膜を除去します。完全にカビの菌を取リ除かないとしばらくしてまた再発します。
内視鏡で真菌塊ほどんど取りきれますが、症例によっては歯茎の上を切開の上、顔面骨を露出させ、直接上顎洞に穴を開けて操作をする術式(上顎洞根本術)を行うこともあります。
手術の後に抗真菌剤の投与を行います
この方は80歳後半の男性の患者さんです。左側の鼻づまりで受診されました。CTを撮ると左側の頬の内側の上顎洞にカビの塊と思われる影を認めました。カビの塊の中に石灰化(白くなっているところです)が見られます。菌の塊が内側の骨を圧迫し内側に膨隆しています。また左側の上顎洞周囲の骨が厚くなっています。
手術を行っているところですが内視鏡手術で、粘土の塊のような真菌塊を摘出しています。実際の菌はアスペルギルスでした。(7.5Mb)