片方の鼻もしくは両方の鼻が常に詰まっている場合、鼻中隔弯曲症および肥厚性鼻炎が疑われます。
鼻中隔弯曲症は、両側の鼻腔の間の鼻中隔を構成する、骨と軟骨の変形によります。自然に発生したものもあれば、転んでぶつけたり、スポーツや事故などの外傷によって起こった外傷性鼻中隔弯曲症もあります。
肥厚性鼻炎は、鼻腔内で両側から張り出している、下(鼻)甲介の粘膜の腫脹や、骨の肥大により鼻詰まりを生じている状態です。
下は、左方向への鼻中隔弯曲症の方です。左側の鼻閉が気になり、受診されました。
鼻中隔を作っている下方の骨の部分と、上方の軟骨の部分の境が左側に強く曲がっています。
また広い方の右側では、下甲介という突起が左に比べ大きくなり(肥厚性鼻炎)、反対に左側の下甲介は小さくなっています。
鼻中隔は軟骨と、骨の部分の組み合わせでできた、左右の鼻の空間の仕切りです。
この骨と軟骨部分のつなぎ目を中心に、鼻中隔の曲がりが生じることがあります。幼少時からの発達の過程で、硬い骨部と柔らかい軟骨部との間の継ぎ目の部分を中心に、尖った部分や盛り上がり(陵)を作ります。
鼻中隔がまっすぐな方はそう多くはなく、日本人の成人の場合、70%の方がどちらかに鼻中隔のがまがっているという説もあります。
鼻中隔が曲がっていることは病気ではなく、治療(手術)を全員がうけなくてはならないことはありません。患者さんの症状に合わせて、手術適応が決まります。
手術をお勧めずるのは次のような場合です。
1.ご本人に耐え難い鼻閉があること
かなり強く鼻中隔がまがっている場合で、鼻閉(鼻詰まり)の主な原因と判断する場合です。鼻骨骨折などケガや外傷によるお鼻の変形による鼻閉もこれに入ります。
一方で弯曲症以外の原因、例えば鼻茸ができていたり、アレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎などで、鼻の粘膜が腫れて鼻づまりがおこっている場合は、そちらの治療が優先されます。
2.鼻出血の原因になっている場合
鼻中隔の曲がった先端た部分の粘膜は薄く、曲がりの強い部分がのた両側の壁に接触することで、ちょっとぶつけたりこすっただけでも鼻出血をおこすことがあります。難治性のくり返す鼻出血に対し手術をお勧めすることもあります。
3.副鼻腔炎の手術を行う際に、鼻中隔の曲りが手術の捜操作に影響が出ると思われる場合
現在副鼻腔炎(蓄膿症)の手術はほとんど内視鏡でお鼻の中から行います。手術の操作をしやすくするために、最初に鼻中隔の曲がりを取ることがあります。