抗体治療薬(オマリズマブ:ゾレア)

オマリズマブとは

 重症のスギ花粉症に対して、抗体治療薬(オマリズマブ 商品名ゾレア)が適応となっています。

 アレルゲン(抗原)と結合したIgE抗体が、アレルギーの症状の出現に必要な肥満細胞との結合を阻害する薬です。

 理論的には、アレルゲンを問わず、全てのアレルギー性鼻炎に効果がありますが、日本ではスギ花粉症のみの適応となっています。

 

 2週間または4週間毎の皮下注射となります。

 

 薬剤の価格が高額であることから、誰にでもおすすめできる治療ではありません。また、厚労省からも、適応となる患者さんの基準が定められています。

対象となる患者さん

 厚労省が基準(最適使用ガイドライン)を決めており、これを保険請求の際に記載しなくてはなりません。そのため、条件が合わない患者さんには、希望されても治療を行えないことを知っていただく必要があります。

 簡単にまとめると以下のとおりです。

 

 1.スギ花粉による季節性アレルギー(スギ花粉症)であると診断されていること(血液検査でスギ特異的抗体がクラス3以上認められる)

 

 2.治療を行っても、コントロールができない重症、最重症の鼻症状が1つ以上が1週間以上続いていること(くしゃみ、鼻水、鼻詰まりのすべての症状があり、そのうちの一つが重症以上であること)また、前年の治療歴についても、把握が必要です。

 

 3.12歳以上で、体重と血中総IgEが基準内に入っていること。(血中総IgEの値が100~1500IU/ml、体重20kg~150kg)

 

 特に、2.の条件が重要で、その年のシーズン中の治療歴が必要です。花粉症症状で来院されてから、一般的治療を1週間以上行った上で、重症以上の症状が続いていることが条件です。

 

 つまり、花粉が飛ぶ前や、初めての受診日に治療を希望されても、その日からのオムリズマブの治療はできないということになります。また症状の把握のために、使用前、使用中はアレルギー日誌を付けていただく必要があります。

 

 また、前年の治療内容とそれによる鼻症状の把握も必要です。初めて受診した病院では、対応できないケースも考えられます。

 

 前の年にオマリズマブによる治療をされている方も、最初と同じ様に、まず1週間は既存の治療を行わなくてはなりません。これは、スギの花粉の量は年ごとに違い、症状も違うことに関係していると考えられます。

 

 かなり、患者さん側の条件が厳しい治療です。


治療期間について

 規定により、この治療は3ヶ月以上は行えません。もともと、スギ花粉症のシーズンのみの治療です。

 治療中、薬(抗ヒスタミン剤など)が全くいらないという状態にはなりません。薬の減量は期待できますが、抗ヒスタミン剤などの併用は必要です。

 


副作用

 報告されている副作用は次のようなものがあります。

1.注射部位の発赤、腫脹、かゆみ、痛み

2.口内炎

3.肝機能の悪化

 


費用について

 注射薬が高額なことも、この治療の難点です。

 投与量、投与間隔(2週または4週)で変わってきますが、1ヶ月分の薬剤費が。11927円~160364円かかります(ペンタイプの場合)。

 健康保険が効きますので、これの1割~3割の負担になります。