経過

 残念ながら、顔面神経麻痺は、100%治る病気ではありません。ベル麻痺で約80%(子供さんの場合はもっと良い治り方です)、ハント症候群で60%くらいと言われます。

 一方で、お薬の治療をしなくとも、自然に良くなることも多いと言われています。特に子供さんの麻痺で見られます。

 

治るまでの期間

  治療を開始しても、すぐに効果が現れるわけでなく、10日程度経ってから治る気配を見せることが多いようです。治りが遅くとも、発症後1ー2ヶ月のうちに改善の兆しが現れた場合、その後の予後は良く、ほぼ完治するというデータがあります。(柳原尚明先生1997)

 しかしながら、6ヶ月以上経過しても、麻痺が残ってしまうという例もあります。

 

予後の予測ー誘発筋電図(ENoG)

 発症7-10日経過後に、顔面の誘発筋電図を取ると、今後の回復の可能性、後遺症の残る可能性を予測することができます。

 

 健側の40%以上の反応があれば予後は良好で、1ヶ月以内の治癒が期待される一方、10%以下であれば、50%の方に後遺症が残る可能性があると言われています。

 ただ、これは参考にしかすぎず、このデータが悪いからといって、必ずしも悪い経過になるとは限りません。

 筋電図は測定器がないとできませんから、検査のできる施設は限られています。

 

筋電図の検査 予後の予測
ENoG検査

なかなか治りにくい場合ー手術を考慮

   治る兆しがなかなか現れなかったり、筋電図の結果が良くない場合、手術を勧められることがあります。顔面神経減荷術といいます。

 

 前にお話ししたように、顔面神経は周りを骨に覆われて走っており、神経の腫れに伴い、周りからの締め付けが進みます。顔面神経の周囲の骨を削って、神経への圧迫を解除してあげることで回復を促すという理屈です。

 

 ただし、発症から時間が経ったケースでは、手術をしても改善しにいこともあります。考え方にもよりますが、発症後1ヶ月位までに、手術を行うかを決定します。

 

   手術を望まれない場合、あるいは全身疾患により手術ができない場合は、治りが遅くとも薬と理学療法で経過をみていくことになります。

 

 6~8カ月間は経過をみますが、不幸にして後遺症が残った場合は、例えば口角のたるみを引き上げる手術や、まぶたを下ろしやすくする手術など、専門の先生(形成外科や眼科)による治療を依頼します。

 

 時間が経つと、筋の緊張が取れ、最初ほど麻痺も目立たなくなる傾向もあります。