耳鳴りの治療5 -TRT 音響療法その3

音響療法のやり方

音を聞く場合は、基本的には耳鳴りが聞こえる側にイアホンを当てるのが基本ですが、聞こえの具合によっては、聞こえの良い反対側の耳で聞くことも良いとされています。あるいは両方で聞いていただいても結構です。

 

 ボリュームについては、耳鳴りを完全に隠すほど大きさにするのは良くありません。耳鳴りの大きさより少し小さいくらいで、わずかに耳鳴りを感じるくらいの音にすることが大切です。

 


 4時間程度聞くことから始め、徐々に慣れてきたら、6時間から8時間聞くようにしてください。特に周囲が静かになり、耳鳴りが気になる夕食後から夜間にかけての時間帯を入れると効果的です。

 

 TRTの効果は、すぐに現れることはありません。最低3ヶ月から6ヶ月の継続が必要です。

 

 TRTはすべての患者さんに有効な治療ではありません。TRTの提唱者のDr.Jasteboff80%以上の有効性を示していますが、実際は効果が出にくい方もおられます。

 

耳鳴りとTRTの理論乗り会が難しい、例えばご高齢の方は効果が乏しい場合があります。

また、耳鳴りが完全に消えないと気が済まないタイプの方にもあまり向かない治療です。

 

TRTは耳鳴りを消す治療ではありません。TRTの目的は耳鳴りを不快なものでない音として受け入れるための訓練を行う治療です。 

 

参考文献

・耳鳴りに対する音響療法 / 小川 郁 Audiology Japan 54, 2011

・補聴器の進歩と聴覚医学 / 小川 郁 Audiology Japan 64, 2018

Tinnitus Retraining Therapy for patients with tinnitus and decreased sound tolerance / Powel J. Jastreboff Margaret M Jastreboff  Otolaryngol Clin N Am 36 (2003)

・Neurophysiological approach to tinnitus patients / Powel J. Jastreboff ,W C Gray American Journal of Otolaryngology 1996