耳鳴りの治療3 -TRT 音響療法

頭の中で起こっている耳鳴り

    突発性難聴や、メニエール病、内耳炎など、病気の最中、直後に起こる耳鳴りについては、内耳のダメージによるものが考えられます。

 しかし、慢性化した耳鳴りについては、その原因については、はっきりしないといわれています。最近では、慶應大学名誉教授の小川郁先生が提唱された理論など、脳のなかでの興奮が高まることが原因という説が有力となっています。

 

 大脳皮質まで音が伝えられたとき、大きな音が入っても不快になったり、聞き取りにくくならないように、神経は音を伝えると同時に、大脳皮質を抑制する働きを持っています。(前方抑制)また目的の音を雑音からはっきりさせるため、周囲の大脳皮質の興奮を抑える働きもあります(側方抑制)

 

   内耳や聴神経のダメージで音が聞こえなり、脳へ入ってくる音刺激が減ると、この前方抑制と側方抑制がはたらかなくなり、その結果、周囲の神経や、大脳皮質での活動性や活動性が通常より高まります。 その結果、通常では聞こえないような音の耳鳴が発生してしまうということが説明されています。

 

補聴器の進歩と聴覚医学 / 小川 郁 Audiology Japan 64, 2018の図を元に改変


Jastreboffによる耳鳴り理論

 こうして発症した耳鳴りは、長期化することで、より不快で、治りにくいものとなります。
 このメカニズムにJastreboffの耳鳴り理論というのがあります
 
① 耳鳴りは、聴覚野や他の大脳皮質で認識される
② ここで「不快な音」と認識すると、その信号が大脳辺縁系(基本的な情動(感情)本能をつかさどる)に伝わり、イライラや不安などの感情を生じる。また自律神経に働きかけ、体調の不調を招く。
③ イライラ感などの感情は大脳皮質下での耳鳴りの知覚を敏感にさせ、また大脳皮質での不快なものとしての認識をより一層強くする、またその記憶が、大脳皮質に残って、その後の耳鳴りに対して、より一層不快に感じやすくなる。

音響療法はJastreboffによる耳鳴り理論でのこの悪循環を断ち切ることが目的です。