小さい子が、急性中耳炎に短期間に繰り返してかかることがあります。あるいは、中耳炎の治りが遅い場合があります。これらを反復性中耳炎、遷延性中耳炎と呼びます。
反復性中耳炎の定義は、世界的にはいろいろありますが、日本の「小児急性中耳炎診療ガイドライン」では「過去6ヶ月以内に3回異常、12ヶ月以内に4回以上の急性中耳炎にかかっている」と定義されています。
繰り返す、もしくは治りにくい中耳炎の背景には、免疫学的な問題や、周囲の環境の問題が関係しています。
まず生まれたての赤ちゃんは、お母さんからもらった抗体が、感染から身を守ります。ただこの抗体は6ヶ月程で消えてしまいます。自分で充分な抗体が作れるようなるになるのにそれから1年以上かかります。ですから6ヶ月から1歳半過ぎまでは感染に対して弱い状態、免疫反応的にポケット状態となります。
母乳の中にもこの抗体が含まれており、母乳保育の方がより赤ちゃんの抵抗力が増すと言われています。
最近は、小さいうちから保育園に預けられるケースが多く、小さい子同士の接触で、ピンポン感染が起こりがちです。また大都市ではマンション、アパートなどでの生活も多く、兄弟間のピンポン感染も起こりやすくなります。
極端にいえば、病気の子供さんと元気なお子さんは別々ににする隔離保育がいいとさえ考えられます。
ただ現在の社会ではご両親共々働いておられる事が多く、住宅事情も決して昔ほど恵まれていないため、こうしたことから逃れるわけにはいきません。
ですから手洗いをしっかりさせることや、風邪を引いたら早めの治療をするなどの対応が必要と考えられます。
また、抗生剤を使う機会が多くなってきていることは、中耳炎の治療を難治化させている原因の一つと考えられています。
長期間、不適切に抗生剤を使っていると、薬に対する抵抗力を持つ菌が出てきます。特に中耳炎に多い肺炎球菌、インフルエンザ菌の薬剤耐性菌への変化は大きな問題とされています。
適正に抗生剤を使うため、中耳炎治療ガイドラインが作成されています。軽症の中耳炎には、抗生剤の使用を控えるよう、提言されています。
保護者の方には、中耳炎に対し、抗生剤をつかわないことに不安を持たれる場合が時々あります。しかし、軽症の中耳炎ではウィルスが関与する例が多いこと、軽症中耳炎では、抗生剤の使用が治癒までの経過と関係しないというデータもありますので、ご理解いただければと思います。