声がれ以外の症状

 喉頭がんの症状としては声がれがよく知られていますが、腫瘍の場所によっては声枯れがそうひどくない場合もあります。声帯の上の声帯にかからない場所に腫瘍ができている場合、声がれが目立たない場合もあります。

 

    症状が進むと、飲み込む時の痛み、血痰などが出てきます。前述の声帯以外に腫瘍ができている場合がこうした症状が最初に出てきます。進行すると、声帯まで進行し、喉の動きが悪くなるので、声がかれてきたり、ものの飲み込みがうまくできなくなり、食事をしたり、飲み物を飲む時にむせるようになります。

 

    腫瘍のができた位置にかかわらず、そのうち進行して大きくなると、声帯の間(声門)をふさぐくらいになります。呼吸が苦しくなったり、喘息のようなヒューヒュー音がするようになります。最悪の場合、急に息ができなくなり、窒息寸前になってしまいます。


  この方は74歳の男性ですが、声帯の上の喉頭蓋と言われる部分に腫瘍ができています。粘膜に覆われてわかりにくいかと思いますが、赤い矢印で囲まれた部分が腫瘍です。

 最初は声帯にかかっていなかったためか、最初は自覚症状に乏しかったようです。次第に声がかれてきて病院を受診されました。

 左側の声帯の動きが悪くなっており、粘膜の下をはって声帯の方にまで延びていたようです。腫瘍により声帯の動きが悪くなり声がかすれる様になって初めて気づかれたということです。


窒息しそうな喉頭癌

 

73歳男性の方ですが、以前から声はかすれていたとのことですが、1ヶ月前から血痰と喉の痛みがあったとのことです。最初は風邪かなと思い、近くの内科で1回だけ薬をもらったとのことですが、その後もだんだんひどくなっていたとのことです。

 お一人暮らしで我慢されていたのでしょう。

 急に呼吸が苦しくなり近くの病院に駆け込み、救急処置が必要とのことで、救急車で搬送されました。

 両方の声帯は腫瘍でびっしりの状態で、空気の通り道がありません。緊急でその場で気管切開(声帯の下の気管を切って穴を開ける処置)を受けられました。夜間でしたのでそのまま我慢していたら窒息死されていたかもしれません。

 

声帯付近を拡大した下の写真(左)と正常の写真(右)をごらんください

 

   長いこと声がかれていたこと、喉が数週間にわたり痛くなり、しかもだんだんひどくなるということを考えると、もう少し早めに耳鼻咽喉科の受診をしていただいて欲しかったと思います。

 

 放射線や抗癌剤での治療は完治が期待できず、この方は喉頭摘出の手術を受けられることとなりました。