朝、起床したあと、右耳の聞こえが悪く詰まった感じに気づいたとのことで受診された、40歳の男性です。
鼓膜の診察をさせていただくと、耳垢で外耳道が塞がっており、鼓膜が見えません。耳垢栓塞(じこうせんそく)といいます。
簡易聴力検査をするとこんな感じです。右(赤色の線)の低い音(左側)が低下していました。(注:通常の診察では、耳垢除去前に聴力検査は行いません)
下の写真の右側2枚のように清掃し、改めて聴力検査を行うと正常聴力となりました。。
普段から、耳掃除はされていたようですが、耳垢を奥に押し込んでいたようです。恐らく前日の入浴時の湿気や、汗で耳垢が膨らんで完全に鼓膜をふさいでしまったのでしょう。
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耳掃除をよくされる方がおられます。
しかし、耳の清掃はやればいいというものではありません。
耳の中、いわゆる外耳道には手前の軟骨部と奥の骨部にわかれますが、奥の方になるほど表面の皮膚は薄くなります。ですから奥のほうが傷がつき易いのです。
この方も、そういう耳の掃除をよくされるかたです。
右の耳です。本来外耳道の手前の軟骨部には毛が生えていることが多いのですが、耳掃除のし過ぎは、皮膚細胞を痛めてしまい、つるつるの状態になっています。そして奥の方は充血してしまっています。
皮膚のバリア機構が弱くなると、最近が皮膚の下に入り込んで感染を起こしやすくなってしまいます。
この方はいつも耳が痒くて仕方がないとのことで、耳掃除を更にやってしまうということですが、やればやるほど皮膚に傷が付き、感染や炎症をおこしますから、悪循環に陥ってしまっていたものと思われます。
一旦耳掃除を自粛していただき、痒み止めの抗ヒスタミン剤、ステロイドや抗生剤の軟膏等を用いて、この悪循環をリセットする必要があります。