顔面神経麻痺の治療法

薬による治療

 治療は内服薬や点滴で行います。

 ステロイドホルモンが中心です。ご承知のように、いろいろな副作用があります。特に、糖尿病のある方、胃潰瘍の既往がある方、うつ病など心の病がある方などには、慎重に使います。

 

 内服薬としてステロイドが処方される場合もあります。しかし、高度な麻痺の場合、ステロイドホルモンの大量療法が勧められる場合もあります。この場合は、点滴で行うこともあります。

 浮腫を取り、神経の腫れを取るために利尿剤や、血の巡りを良くするお薬(循環改善剤)も一緒に使われます。点滴の場合は、入院の上行われることもあります。入院期間は施設により様々だと思いますが、10日~2週間は見ておいたほうがいいかと思います。

 

 その他、ビタミンBやATPと呼ばれるお薬を一緒に使います。

 

   さらに、抗ウィルス剤も併用されます。前にも述べましたが、ヘルペスウィルスが顔面神経麻痺と深く関係している事が多いことより、早い段階から一緒に使われます。

 

 目が閉じれないことが多く、乾燥によって角膜を痛めてしまうのを防ぐために、人工涙液(ヒアレインといった目薬)や、眼に入れる軟膏を処方します眼帯で眼を保護することも大切です。

 

薬以外の治療

顔面のリハビリ 

 薬の治療の他に、顔面のリハビリがあります。顔面マッサージや、鏡を見ながら、顔面を動かす運動訓練です。

 

 あまり早い段階から、これらを開始するのは良くないという説があります。

 また、マッサージや運動訓練も、ただ一生懸命すればいいというものではありません。あまり大きな激しい動きは良くないといわれています。「病的共同運動」という、いびつな治り方をしてしまうのです。

 例えば口を「いー」とした時、意識していないのに、口と一緒に目をつむってしまうといった治り方です。これは、治癒の過程で、顔面神経の繊維が、異なる場所の筋肉を同時に刺激するような治り方をすることで起こります。

 

   昔は、低周波マッサージ(電極をはってビクッビクッとさせるマッサージ器)のような、刺激を与えるような機械を使ったリハビリをしていた時期もありました。しかし、上記のような病的共同運動を起こす危険性があるため、最近はやらなくなりました。

 今では、ご自分でやっていただく、優しい顔面マッサージと運動訓練が中心です。

星状神経節ブロック

 星状神経節ブロックは、首の動脈のそばにある、星状神経節に局所麻酔薬を注射し、一時的にその働きを抑える治療です。

 星状神経節は交感神経の集まりであり、本来は血管の収縮に関係しています。これをブロックすることで、血管が広がり、首から顔面への血液の流れを増加させる作用があります。

 

 ただ、一時的に注射を打った側のまぶたが下がったり、縮瞳(瞳孔が小さくなること)がおこったり、周囲へのお薬の広がりによる声がれなど、やや違和感を感じる方もおられます。また注射を首に打つというのが怖いという方もおられます。

 血液がサラサラになるお薬を飲んでいる方にはできません。また、体格によっては(首が短く、太い方など)、施行が難しいこともあります。

 そのため、全員の方に行われる治療ではありません。実際の治療の多くは、麻酔科やペインクリニックの先生に行っていただきます。

 

 星状神経節ブロックは、顔面麻痺の治療のみでなく、帯状疱疹後の神経痛の軽減にも効果があるという説もがあります。そのため、帯状疱疹ウィルスによる、ハント症候群の方にお勧めすることがあります。