頭痛と副鼻腔炎

   鼻の病気で、頭痛や目の痛みが起こることがあります。

 

   長く続く頭痛にはいろいろな原因があります。

   脳への血液の流れに問題があるケース(偏頭痛や群発頭痛など)や、脳自体に異常がある場合(脳腫瘍や脳出血など)が挙げられます。三叉神経痛や、後頭神経痛などの神経痛もあります。筋肉に関連する筋緊張性頭痛も珍しくありません。時には血管炎等、免疫が関係した病気の症状であることもあります。

  

副鼻腔炎による頭痛

   頭痛の原因を確かめるため、脳神経外科、神経内科、一般内科などいろいろ受診される場合があります。検査の中でCTやMRIを撮られ、副鼻腔炎が見つかって紹介されるケースが時々あります。

 

   副鼻腔炎の場合、多くは蝶形洞(ちょうけいどう)や篩骨洞(しこつどう)という、眼の間や眼の奥の空洞に炎症があります。炎症そのものの痛みではなく、時には嚢腫(のうしゅ)という袋ができ、それによる圧迫で痛みが起こっている場合もあります。

   

   特に蝶形洞に病変があると、頭の芯が痛かったり、目の奥に痛みが出ることもあります。時には視力や見える範囲が狭まって来たり、二重に物が見えるといった症状が出ることもあります。

 

副鼻腔や上咽頭の腫瘍が原因のことも

   副鼻腔炎だけでなく、副鼻腔の腫瘍、お鼻の奥の上咽頭の腫瘍が痛みの原因であることもあります。CTやMRIでしかわかりにくいこともあります。


頭痛 副鼻腔炎 前頭洞炎

   この患者さんは、右眼の上の持続的な痛みで受診された方です。
   頬や目の内側、奥、おでこの部分に4つの副鼻腔という空洞があります(→副鼻腔炎とは)この方は前頭洞というおでこの奥の空洞とお鼻の間の交通路がつまっており、前頭洞の中に膿がたまった前頭洞炎を起こしていました。
   お薬での治療が効果が乏しく、痛みも強いため、内視鏡をつかったお鼻の中からの手術でこの交通路を開きました。

 術後1年後も、CT上、閉塞せずに交通路が残っています。頭痛についても、術後は消失したとのことです。


   眼の上の頭痛は、三叉神経痛でも起こります。

   三叉神経は顔面の感覚に関係した神経で、眉の部分から顔の表面に枝が出ています。三叉神経痛の場合、顔面表面の痛みで、電撃痛、拍動痛等が多いようです。皮膚を触ると痛みが激しくなる、ビリビリするなどが特徴的です。

    レントゲンやCTで副鼻腔炎がなければ、三叉神経痛も考えるお薬を処方し、痛みの変化を観察します。


   この患者さんも目の内側の重い感じ、痛みにて受診された方です。

 

 篩骨洞という目の内側の副鼻腔に嚢腫という袋ができています。蓄膿症(副鼻腔炎)の手術を以前に受けた方にまれに見られますが、全く手術を受けたことがない方の例もあります。場合によっては眼を圧迫し、ものが二重に見えたりすることもあります。

 

 こういう嚢腫はお薬での治療には限界があり、手術で大きく鼻腔側から交通をつけます。

手術後のお鼻からの写真ですが、大きく交通路がついています。


 われるような目の辺りの痛みで眠れないとの訴えで来院された、子供さんです。

 

 嘔気も強く、当初髄膜炎も疑われ、髄液検査も行われたのですが異常がなく、紹介となりました。

 

 三叉神経痛の典型的な症状もなく、CTで蝶形骨洞に陰影があり、服鼻腔炎による痛みも考えられ、抗生剤の点滴を開始しました。

 

 翌日には痛みが軽減し、5日目には退院して行きました。

 約2ヶ月程度、内服での副鼻腔炎の治療を行い、蝶形骨洞炎が消えたのを確認しました。 蝶形洞炎では、症例によっては、早期の手術を行います。


 お鼻の奥に腫瘍ができた上咽頭がんの患者さんです。

    頭痛がひどく、CTやMRIを撮っておられたものの、原因がはっきりせず、紹介で受診された方です。単純CTなどでは上咽頭がうつってなかったり、造影剤を使わないと異常に気づかない場合もあります。

   上咽頭癌では、頭の芯や後頭部の痛みを訴えられることが多いようです。