くびのしこり-「柔らかいしこり」編-2

3先天性リンパ管腫

 これも生まれつき持っている袋の病気です。正中頸嚢胞や、側頸嚢胞2つと異なり、1つの袋状ではなく、内部に壁を伴った2つ以上の袋が集まったような形をしていることもよくあります。内部にはリンパ液がたまっています。
    お母さんのお腹の中で赤ちゃんの身体がつくられるなかで、リンパ管という管が作られる時の「神様のいたずら」でリンパ管が膨れたり、小さいリンパ管が集まって袋のような柔らかい腫瘤になります。

上記2つに比べ柔らかく、下を向いたり、頭を低くして横になると膨らみが強くなることがあります。症状はあまり無いことも多いのですが、内部で出血したり感染すると痛みを伴います。


 また体中のいろいろな場所にできますが、特にくびにできたものは大きくなると気管を圧迫し、呼吸がしにくくなり危険なことがあります。このような場合は手術で摘出することになります。ただし、通常の嚢胞性の病気と違い、形がいびつなことも多く完全摘出がなかなか難しく、残存してしまうこともよくあります。


 そこで緊急性のないものや小さいものは、手術でなく、OK432注入療法を行うことが増えてきています。これはピシバニール(OK432)というお薬を超音波で腫瘤を確認しながら中に注入する方法です。このお薬は袋の中で炎症を起こし組織を変化させて、液が溜まってくるのを抑えると言われています。


 この方法は簡便ですが、あまり大きい物には数回行っても小さくなりにくいことがあります。

 外来でできる処置ですが、小さいお子さんの場合は全身麻酔で行う必要があることもあります。

 また気管のそばの腫瘤に対して行うと、処置後に周囲が炎症で腫れ上がり、呼吸が苦しくなることがあります。そこで腫瘤のある場所によっては1日経過観察の入院を行います。


4.がま腫

 がま腫とは、顎下腺や舌下腺という口の底の奥にある唾液腺や、唾液腺から口へ続く唾液管が何らかの刺激で損傷をうけたり、管が(石などで)詰まったりしたことで、そこから唾液が外に漏れ、やがてその周囲に膜ができ袋状になったものです。実際取り出すと、うすい膜でおおわれた半透明の袋をしています。中には唾液が溜まっています。

 

 通常口の中の底、舌の付け根にできます。口を開けたときに見ることができます。ただし時に口の底の筋肉のすき間から、顎の下の方にはみ出るような形でできてくることがあります。こういうケースでは、一見正中頸嚢胞のような顎の下の中央に袋ができていることがあります。


 写真は、口の中の底と顎の下の両方に連続するがま腫がみられた大人の方です。

5.その他の柔らかい腫瘤

 血管腫という血管が母体となった良性の腫瘍なども時々見られます。また脂肪腫という脂肪の塊なども見られます。

 

6.悪性の腫瘍のこともあります

 柔らかい液がたまったような腫瘤は良性の病気で腫瘍より嚢胞(袋)のことが多いのですが、まれに悪性腫瘍のこともあります。


 写真は大人の方のくびの左側に出来たゴムボールのような柔らかい腫瘍です。

 注射器で刺してみると、透明な液が吸引され一見良性の嚢腫のように見えした細胞診(液の細胞を調べる)を行うと癌の転移したリンパ節であることが分かりました。

 このように袋状の腫瘤であっても悪性の腫瘍のこともありますから、必ず専門医の診察を受けられることをお勧めいたします。

柔らかいしこり 1 もごらんください