心因性難聴 -診断と治療

検査

聴力検査

 まず通常の聴力検査(純音聴力検査)を行います。

 機能性難聴では、低い方から高い方にかけてのすべての音域で同じ程度の聴力低下を起こす、水平型難聴が典型的です。またほとんど聞こえない聾型の方もよく見られます。


 聾型の方でも、一般に診察している時にそれを感じさせないことがよくあります。右側が全く聞こえないのに、話しているときはまっすぐ向いている(通常であれば、聞こえる左側を前に向けるために顔を右に向きますね)などです。
 
 機能性難聴を疑った場合、自記オージオメトリーという特殊な検査方法で聴力検査を行うこともあります。ただし最近は次の他覚的検査を直ぐ行うことが多いと思います。
 

他覚的聴力検査

 他覚的聴力検査とは、自分の意志に無関係に結果が得られる聴力検査です。つまり聴覚野までの反応があるかどうかを確かめます。
 一般的な病院で行われているのには次のようなものがあります。


1.アブミ骨筋反射
  これはもともと顔面神経麻痺の診断で行う検査です。大きな音を聞いた時、反射的に鼓膜の張りを調整する筋肉が緩み、鼓膜の音に対する反応を下げる生理的な反応を見ます。音が聞こえていればこの反応が出ますが、聞こえない場合は認められません。ただ簡易式の検査になります

2.耳音響反射(OAE)
 これも簡易式の検査ですが、外からの音に対して、内耳の細胞から発せられる誘発音を測定する検査です。


3.聴性脳幹反応(ABR)、聴性定常反応検査(ASSR)
  これは検査が煩雑なことと、脳波を取るための部屋が必要となるので、一般的には大きな病院で行われていることが多いと思います。

 きちんとした診断にはこ の検査が必要です。いずれも音に対する脳波を測定する検査です。機能性難聴の場合、通常の聴力検査で低下していても、これらの検査を行うともっと小さい音 に対しても、脳波の反応が認められます。


 この子は中学校に入ったばかりの女の子です。9月の新学期が始まってから急に聞こえが悪くなっていることで近くの耳鼻咽喉科を受診されました。

聴力検査はこのように右側(赤色)がほとんど聞こえていない状態です。ただ診察では1mほど離れていてもお顔はまっすぐのまま、お話ができており、心因性難聴を疑わせました。

脳波の検査(ABR)を行ってみました。V波が出ていることが大事なのですが、悪い方の右側も20dBまで聞こえているようです(数字が小さいほど、小さな音になります)

 上の聴力検査のとおりであれば90dBでもV波の反応は出ないはずであり、このケースは機能性(心因性)難聴という診断になります。


 学校の先輩とのトラブルがありそうで、新学期が始まり心理的に負担が大きかったものと思われます。こういう場合、学校の先生も一緒に治療にあたっていただく必要があります。


治療について

 心因性難聴は多くが、ストレスが原因で起こります。ただ厄介なことは、ストレスの原因を本人や周りが気づいていないケースが多いことです。実際大人の方だと、「疲れているけど、いつもこうだから」などと言われる方が多いのです。

 
  子供さんはもっとわかりにくいことがあります。発覚しにくいいじめはもちろんですが、運動クラブや、習い事での指導の厳しさや、受験、学校での人間関係ストレスなど、大人以上に色々な原因があります。


   心因性難聴は、ストレスや心配事が体に負担となっても、それを発散できずに少しづつ心がむしばられている状態です。耳が聞こえないと言った、体の一部が悪いように思ってしまうのは、その人の意思と無関係に、体が悲鳴をあげているSOS信号と考えてもいいのです。周りが早く察知してあげ、心の負担を取り除いてあげることが大切なのです。

 ストレスの原因をはっきりさせ、それを取り除くことが第一ですが、実際はなかなか難しいことが多いのです。ストレスから解放されれば、すぐに聴力検査で正常な結果を得ることができます。ただ、そのストレスがはっきりしなかったり、ご本人が心からそれから解放されないと、なかなか自覚症状がとれません。


   せっかく聴力が戻っても、新たなストレスがかかると、おなじような症状がぶり返すこともあります。周りの協力や心配りが必要です。

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